循環器カリキュラム
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初期研修医 循環器カリキュラム
臨床研修での心構え
心血管臓器に関する疾患を研修することを目標とする。基本的な循環器疾患を複数受け持つことにより、病態、症候、診断、治療と予後を学び、循環器疾患に対する理解を深める。
到達目標
1 | 主要な疾患、症候や病態を診断し、診断と治療計画の立案、実施に参加できる。 |
2 | 循環器疾患の救急患者において、迅速な診断および治療の現場に立ち会い、対応の仕方を学ぶ。 |
3 | 各循環器疾患に対する、適切な検査法、治療法を学び、疾患の重症度に合わせた対応の仕方を学ぶ。 |
実習する頻度の高い疾患の例:
心不全、高血圧症、狭心症、急性冠症候群、急性大動脈解離、不整脈、肺塞栓症、閉塞性動脈硬化症、拡張型心筋症、肥大型心筋症、弁膜症、急性心筋炎、急性心膜炎、感染性心内膜炎など
心不全、高血圧症、狭心症、急性冠症候群、急性大動脈解離、不整脈、肺塞栓症、閉塞性動脈硬化症、拡張型心筋症、肥大型心筋症、弁膜症、急性心筋炎、急性心膜炎、感染性心内膜炎など
総論
1 問診
GIO
診断、治療に必要な情報を得られる。
診断、治療に必要な情報を得られる。
SBO
- 心血管疾患にみられる臨床病状を患者から情報として得ることができる。
- 患者の訴えを聞くだけでなく、必要な事項を質問できる。
- 喫煙歴、家族歴、既往症など、冠危険因子に関して聴取できる。
2 聴診
GIO
循環器に必要な聴診が行える。
循環器に必要な聴診が行える。
SBO
- 拡張期雑音、収縮期雑音を見分けられる。
- 駆出性雑音、逆流性雑音を見分けられる。
- 3音、6音を見分けられる。
3 胸部レントゲン写真
GIO
見落としなく、論理的な読影ができる。
見落としなく、論理的な読影ができる。
SBO
- 正常かどうかが見分けられる。
- 肺うっ血を見分けられる。
- 呼吸不全の原因精査の際に、呼吸器疾患と循環器疾患に伴う呼吸不全を見分けられる。
4 心電図
GIO
見落としなく、論理的な読影ができる。
見落としなく、論理的な読影ができる。
SBO
- 調律を判読できる。
- 不整脈疾患を見分けられる。
- 虚血性心疾患による変化を見分けられる。
- 虚血性心疾患による時間的な心電図変化を見分けられる。
- 肺塞栓、心嚢水貯留などによる非特異的な心電図変化を見分けられる。
- Holter ECGの適応を理解し、解析結果を論理的に判断できる。
- 運動負荷心電図を安全に施行し、虚血性心疾患を診断できる。
5 心エコー図
GIO
見落としなく、論理的に病態を把握できる。
見落としなく、論理的に病態を把握できる。
SBO
- イメージを鮮明に描出できる。
- 機器操作を正確にできる。
- 検査手順を正確に把握できる。
- MモードまたはSimpson methodにより、心機能を評価できる。
- 得た画像より的確に病態が把握できる。
- 鑑別疾患が列挙できる。
- Doppler modeを使いこなせる。
6 心血管カテーテル検査
GIO
心臓カテーテル検査、大動脈造影検査、末梢動脈造影検査の適応を学び、検査結果を理解できる。
心臓カテーテル検査、大動脈造影検査、末梢動脈造影検査の適応を学び、検査結果を理解できる。
SBO
- 動静脈穿刺の手技と合併症が概説できる。
- カテーテル検査の適応や禁忌、合併症について概説でき、手技を理解できる。
- Swan-Ganzカテーテル検査に際して、Forrester分類に準拠して、心不全の鑑別および治療ができる。
- 心血管の解剖を完全に把握できる。
- 米国心臓協会(AHA)のセグメント分類を理解し、正確かつ迅速に冠動脈の狭窄度を評価できる。
- 病状に合わせて、的確な治療方針を選択できる。
- 血管内超音波所見より、正確に血管性状を把握し、次の治療手段を考えられる。
7 心臓核医学検査
GIO
心臓核医学検査の種類や適応を学び、的確に結果を理解できる。
心臓核医学検査の種類や適応を学び、的確に結果を理解できる。
SBO
- 心臓核医学検査の適応を理解し、適切な検査をオーダーできる。
- 各薬剤による正常像を理解している。
- 運動負荷検査と薬物負荷検査の長所・短所を理解し、概説できる。
- 心筋シンチグラフィーの検査結果から治療方針を選択できる。
8 高血圧検査
GIO
本態性高血圧症と二次性高血圧について、原因、病態を理解し、評価できる。
本態性高血圧症と二次性高血圧について、原因、病態を理解し、評価できる。
SBO
- 眼底検査、二次性高血圧の検索の為の採血(血中カテコラミン、血清レニン活性、血清アルドステロン、甲状腺機能など)を的確にオーダーできる。
- 必要に応じて、腎血管造影などをオーダーできる。
- 家庭血圧の測定の必要性を説明できる。
9 救急処置
GIO
病態に合わせて、適切な救急処置ができる。
病態に合わせて、適切な救急処置ができる。
SBO
- 病態を適切に把握できる。
- 抗不整脈薬、利尿薬、強心薬、血栓溶解薬、血管拡張薬などを適切に選択し、使用できる。
- アンビューバックによる用手的人工換気および気管内挿管を迅速かつ安全に行える。
- 心室粗・細動を認めた際、電気的除細動や心肺蘇生術を迅速に行える。
- 心タンポナーデの診断と心膜穿刺術の適応を迅速に判断できる。
- 一時的ペーシング(経皮的、経静脈的)の適応と設定を理解できる。
- 大動脈内バルーンパンピングの適応疾患と禁忌、合併症を概説できる。
10 循環器特殊治療
GIO
循環器専門医の治療を適切に介助できる。
循環器専門医の治療を適切に介助できる。
SBO
- 恒久的ペースメーカー植え込み術、経皮的冠動脈形成術、経皮的下肢動脈形成術、経皮的腎動脈形成術、カテーテルアブレーション、下大静脈フィルターについて、適応や合併症、実際の治療法について概説できる。
各論
1 心不全
GIO
心不全の原因を診断し、的確に治療できる。
心不全の原因を診断し、的確に治療できる。
SBO
- 胸部レントゲン写真、心電図、心エコー図、血液ガス所見などにより的確に原因と重症度を診断できる。
- 必要であれば、Swan-Ganz catheterを留置し、Forrester分類に準拠して、心不全の鑑別および治療ができる。
- 治療に用いる各種薬剤の作用機序を理解し、適切な治療を選択できる。
2 狭心症、急性冠症候群
GIO
迅速に診断し、循環器専門医に上申できる。
迅速に診断し、循環器専門医に上申できる。
SBO
- 心電図、症状より的確に診断できる。
- 急性冠症候群の場合、抗血小板剤やヘパリンなどを的確に投与できる。
- 循環器専門医と連携し、カテーテル検査や治療の適応を的確に判断できる。
- カテーテル治療の合併症について、概説できる。
3 心筋症、心筋炎
GIO
迅速に診断し、確定診断するための検査を選択できる。
迅速に診断し、確定診断するための検査を選択できる。
SBO
- 風邪の前駆症状、心電図、症状より、急性心筋炎を疑うべき時に、鑑別に上げ、遅滞なく診断できる。
- 心筋症と心筋炎が鑑別できる。
- 診断に至るまでの検査を的確に指示できる。
- 合併症の治療が的確にできる。
4 不整脈
GIO
迅速に診断し、的確に治療ができる。
迅速に診断し、的確に治療ができる。
SBO
- 診断に至るまでの検査を的確に指示できる。
- 病状に応じて、抗不整脈薬、電気的徐細動、カテーテルアブレーションを選択できる。
- 心房粗・細動の場合、CHADS2スコアーに基づいた抗凝固療法の適応について概説できる。
5 弁膜症
GIO
原因や重症度の評価方法や治療について理解できる。
原因や重症度の評価方法や治療について理解できる。
SBO
- 心電図、胸部レントゲン写真、心エコー図などを用いて、病態、重症度を評価できる。
- 必要に応じて心臓カテーテル検査を行い、手術適応について検討することができる。
- 合併症に関し、理解し概説できる。
6 大動脈疾患(大動脈瘤、大動脈解離、大動脈炎症候群)
GIO
的確に診断し、外科的な手術適応を判断できる。
的確に診断し、外科的な手術適応を判断できる。
SBO
- 的確な症状の聴取や身体所見などから、大動脈疾患を疑うことができる。
- CTなどで迅速に診断し、外科的手術を含め、適切な治療手段を判断できる。
7 末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症、動脈瘤、急性動脈塞栓症)
GIO
カテーテル治療や、外科的手術の適応を理解できる。
カテーテル治療や、外科的手術の適応を理解できる。
SBO
- 閉塞性動脈硬化症について、Fontaine分類に基づいて診断、評価できる。
- 症状、CT、血管造影、MR-Angio像などから、治療手段を判断できる。
- カテーテル治療の合併症、外科的治療の合併症とその頻度について概説できる。
8 静脈疾患(深部静脈血栓症、血栓性静脈炎、下肢静脈瘤)
GIO
診断し、治療できる。
診断し、治療できる。
SBO
- 各疾患の病因や症候を説明し、治療を概説できる。
- エコーや下肢静脈造影検査、造影CTを的確にオーダーできる。
- 下大静脈フィルター留置の適応基準について理解できる。
- 下肢静脈瘤の外科的治療の適応を理解している。
9 高血圧症
GIO
病状に合わせて、治療できる。
病状に合わせて、治療できる。
SBO
- 本態性か二次性かの鑑別ができる。
- 合併症に合わせて降圧剤が選択できる。
- 降圧剤の相互作用を期待して、降圧剤を選択することができる。
研修方略(LS)
研修期間:8週間以上
研修内容
研修内容
1 | 一般外来、救急外来から主に緊急入院した循環器内科の症例を担当医として受け持つ。 |
2 | 入院時にはインフォームドコンセントの実際を学び、治療計画の立案に参加する。 |
3 | 急性冠症候群など、緊急心臓カテーテル検査に至る救急症例の検査および治療を、上級医と共に担当する。 |
4 | 指導医のもとで、心臓カテーテル検査において、1年目研修医は主に右心カテーテルを、2年目研修医は左心カテーテルまで担当する。 |
5 | 指導医の下、心エコーや運動負荷検査を行い、手技を習得する。 |
6 | 症例検討会で担当患者のプレゼンテーションを行い、診断や治療方針について指導医とともに検討する。 |
7 | 担当した症例を中心に積極的に文献検索を行い、幅広い知識を習得する。 |
8 | 診療情報提供書、証明書、死亡診断書などを記載する(ただし主治医との連名が必要)。 |
9 | 経験した症例のレポートを臨床研修ノートに基づいて作成する。 |
10 | 担当した症例が退院した際には2週間以内に退院サマリーを作成する。 |
評価(EV)
1 | 研修医の到達度評価は、各分野・診療科のローテーション終了時に、医師及び医師以外の医療職(看護師を含む)が研修医評価票Ⅰ、Ⅱ、Ⅲを用いて評価する。 |
2 | 上記評価の結果を踏まえて、少なくとも年2回、プログラム責任者が、研修医に対して形成的評価(フィードバック)を行う。 |
3 | 2年間の研修終了時に、研修管理委員会において、研修医評価票Ⅰ、Ⅱ、Ⅲを勘案して作成される「臨床研修の目標の達成度判定票」を用いて、到達目標の達成状況について評価する。 |
4 | 「経験すべき 29 症候」と、「経験すべき 26 疾病・病態」の研修を行ったことの確認は、日常業務において作成される病歴要約に基づくこととし、病歴、身体所見、検査所見、アセスメント、プラン(診断、治療、教育)、考察を含み、「病歴要約提出状況」の全ての項目に指導医の確認と評価をもらう。 |
週間スケジュール
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
---|---|---|---|---|---|
午前 | 心エコー 運動負荷検査 |
外来 心エコー 心筋シンチ (心カテ) |
心エコー 心筋シンチ 運動負荷検査 |
外来 心エコー 心筋シンチ (心カテ) |
心エコー 心筋シンチ |
午後 | 心カテ 病棟回診 |
心カテ 病棟回診 |
心カテ 病棟回診 |
心カテ 病棟回診 |
病棟回診 |
夕刻 | 月1回で研修医症例検討会 (主に救急外来症例) |